「国宝・妻沼聖天堂の魅力」シリーズ5

 

彩色の保存・復元と豪華な中殿・花頭窓

 聖天堂の中殿は、結界を越えた僧侶のご祈祷の場であります。
 外観では、拝殿と奥殿を視覚的につなげ、彫刻・彩色が次第に増え始め、観る人を徐々に高揚させる、といった権現造りの特性がよく表現された点が、この聖天堂の中殿でしょう。
 軒下小壁には狩野派の絵師による絵画が描かれており、250年以上もの間、直射日光や風雨に曝され続けたため、絵画は色あせ、ほとんど解らなくなっていました。
 今回の保存・修復工事では、元の絵の保存と復元という、全く相反する難題を同時に解決する、わが国初の新しい修復方法が採用されました。
 つまり、この小壁の部分では、元の彩色の上に剥落止めを施した後、新たに別の板に同じ絵を描き、それを上から嵌め込むことで、250年前の彩色を保存し、同時に当時の姿を再現させたという訳です。

 

元の彩色が新しい彩色の下に隠された小壁 金箔貼りの豪華な花頭窓

元の彩色が新しい彩色の下に隠された小壁

金箔貼りの豪華な花頭窓

 さらに彫刻については、剥落止めを施した元の彫刻に、指の先ほどに引きちぎった和紙を全面に貼り付け、その上から江戸時代と同じ顔料で改めて彩色を施しました。

 ですから、新しく復原された小壁や彫刻には、250年の歴史を刻んだ彩色・顔料が、ひそかに眠っているのです。
 この保存・修復方法は、平成20年の「東アジア世界遺産会議」で文化庁から発表され、各国関係者の間に大きな反響を呼んだ、といわれるものです。
 奥殿に接する位置にある花頭窓は、肉彫彫刻の双龍が互いに尾を絡め、頭を下にして水を吐く迫力溢れる構図です。
 背板の地紋彫りが黒漆仕上げのため、双龍の金箔を浮き上がらせ、彫刻と漆塗り、金箔を活かすと共に、彫刻化された建築部材として代表的なものと言われています。
 惣棟梁・林家に残る絵図面では、普通の花頭窓枠だったものが、歓喜院蔵の絵図では華やかに彩色され、さらに最終施工段階で、現在の豪華な花頭窓に変化したことが解ります。
 次回は、最も豪華な奥殿周りについてお話を進めたいと思います。(文・写真:阿部修治)

 

著者紹介:熊谷市在住。上武郷土史研究会主宰、阿うんの会・講師。
     全国歴史研究会、埼玉県郷土文化会、木曽義仲史学会、他各種会員。
主な著書:『妻沼聖天山』、『甦る「聖天山本殿」と上州彫物師たちの足跡』(以上さきたま出版会)、『寺社の装飾彫刻・関東編上』(日貿出版社)、
     『斎藤氏と聖天堂』(熊谷市立熊谷図書館)、『歴史と文化の町・“めぬま”』(阿うんの会)

 

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