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 代表的な装飾建築である聖天堂は、手前の拝殿から、中殿・奥殿へと次第に奥へ進むに従い、彫刻・彩色などが豪壮・華麗となり、徐々に観る人を高揚させるような造りになっています。
 従って、拝殿では向拝部分だけの彩色に留め、建物両サイドを飾る龍や獅子などは、あえて簡素な木地溜塗り仕上げにすることで、中殿、奥殿との格式の違いがはっきりと表されています。
 とはいえ、拝殿向拝部分にも見所が沢山あり、中でも目立たないのが「手挟み」といわれる屋根下にある大きな籠彫り彫刻です。
 一般的に拝殿向拝部分に「手挟み」彫刻を備えている神社は多いのですが、妻沼聖天堂の「手挟み」は特に大きいのが特徴です。
 聖天堂は、拝殿向拝部分の奥行きを広く取ってあり、雨の日でも参拝が楽になっています。
 向拝屋根の下に広いスペースができることで、大きな手挟みが造れることになったのです。

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長さ約2m、幅・厚み約42cmの大きな「手挟み」彫刻

 

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 拝殿正面の外拝は、参拝者が大勢乗るため、柱で支えるのが一般的で、豪華な神社建築で知られる日光東照宮や久能山東照宮などの国宝建造物でも、縁束と呼ばれる短い柱で支えています。
 しかし、この聖天堂は斗供と呼ばれる組み物で支えています。
 このような構造は大変重厚な感じを与え、見栄えは良いのですが、費用・工期などの面で採用されることは大変稀で、他ではめったに見られない、聖天堂の特徴の一つといえるでしょう。

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縁束(柱)で支える久能山東照宮

斗供で支える妻沼聖天堂

次回からは中殿・奥殿のお話しをしましょう。(文・写真:阿部修治)

 

著者紹介:熊谷市在住。上武郷土史研究会主宰、阿うんの会・講師。
     全国歴史研究会、埼玉県郷土文化会、木曽義仲史学会、他各種会員。
主な著書:『妻沼聖天山』、『甦る「聖天山本殿」と上州彫物師たちの足跡』(以上さきたま出版会)、『寺社の装飾彫刻・関東編上』(日貿出版社)、
     『斎藤氏と聖天堂』(熊谷市立熊谷図書館)、『歴史と文化の町・“めぬま”』(阿うんの会)

 

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